数あるメタバースの中には、現実の不動産のように土地を買えるプラットフォームがあります。「メタバースの土地を企業が何億円で購入した」といったニュースを見たことがある人もいるかもしれません。こうした会社は、なぜ仮想空間にしか存在しない土地を買うのでしょうか。 この記事では、メタバースにおける土地について詳しく解説します。メタバースの土地を買う目的や購入方法も紹介しますので、ぜひご覧ください。
この記事でわかること
メタバースにおける土地とは?
メタバースにおける土地とは、メタバース内に存在する「特定区画のデータ」です。仮想空間内にしか存在しないものの、現実世界の土地と同じく購入できます。購入した土地は転売も行えるため、ユーザー同士の取引が可能です。
メタバースの土地はデジタル空間にあると聞くと、「デジタル空間なら土地は無限にあるの?」と思う方もいるのではないでしょうか。しかし、メタバースの土地数は有限です。多くのメタバースベンダーは、ユーザーに提供する土地の数を抑えています。土地の数に限りがあることで、現実世界の土地と同様に「希少性」が生まれ、資産価値を持たせられるからです。
また、メタバースの土地の資産価値には、メタバース自体のユーザー数も関わります。ユーザー数の多い人気メタバース「The Sandbox(サンドボックス)」の土地は、2021年11月に米国のリパブリック・レルム社によって約430万ドルで購入されました。企業が高額で買うほどにメタバースの土地の需要が増している理由に、「NFT(非代替性トークン)」の普及があります。
NFTとは? ブロックチェーンとの関連性
メタバースの土地は、NFTにより同一性や所有権が保証されています。NFTとは、ブロックチェーンを用いて「この世にただ1つしかないデータ」であると証明する技術です。
NFT以前のデジタルデータは、「誰でも簡単に複製できる」といった問題点がありました。たとえば、デジタルイラストのコピーや転載は誰でも行えます。現物の絵画であれば真贋鑑定により「作者が制作した本物」と証明できますが、容易かつ完璧に複製可能なデジタルイラストは見分けがつきません。そのため、オリジナルデータに価値を持たせるのは困難でした。
そこで登場したのが、NFTです。NFTは、ブロックチェーンにオリジナルデータの作成者や保有者、取引履歴などの記録一覧を保管します。複製データはブロックチェーンに記録がないため、当然ながらオリジナルの証明ができません。反対に、NFT化されたオリジナルデータは記録があり、唯一無二の作品として価値が保証されるようになりました。メタバースの土地もNFT化されているため、資産価値が生まれているわけです。
▼メタバースのNFTについては、こちらの記事でも詳しく解説しています。
全てのメタバースで土地を買えるわけではない
世界中のあらゆるメタバースで土地を売り出しているわけではなく、土地を購入できるメタバースは限られています。実際に、バーチャル空間で遊べる「Cluster」はメタバースサービスですが、土地の売買はしていません。土地を購入できるメタバースは、「The Sandbox(サンドボックス)」や「Decentraland(ディセントラランド)」が代表的です。メタバースの土地が欲しい場合は、こうした土地を買えるメタバースを選ぶ必要があります。
メタバースの土地を買う目的や活用方法
NFT化されたメタバースの土地は需要が伸びているわけですが、どういった購入目的があるのでしょうか。主な目的は、以下3つが挙げられます。
1.仮想空間における不動産投資
2.店舗運営
3.イベント開催
具体的な活用方法と合わせて説明します。
1.仮想空間における不動産投資
メタバースの土地は、実際の不動産投資と同じような投資対象になります。いわば、仮想空間で行う不動産投資です。土地を貸し出して定期的な「賃貸収入」や、土地を安く買って高く売る「売却益(キャピタルゲイン)」を得るなどの投資方法があります。
メタバースの土地は、ユーザー数の増加以外にもさまざまな要因で地価が上昇します。現実における都心部の不動産は価値が高いですが、メタバースの土地も同様です。企業が参入するような人気エリアの価値は上昇しやすく、安い時期に購入すれば大きな売却益を得られるでしょう。また、人気エリアであれば賃料も高めに設けられます。メタバースの土地を活かした投資は、現実の不動産投資と大きな違いはありません。
2.店舗運営
メタバースの土地に建物を築き、バーチャル店舗として運営する場合もあります。「メタコマース」や「VRショッピング」とも呼ばれ、仮想の店舗内で現実の商品を購入できる仕組みです。メタバースの中には、バーチャル店舗が集結した商業施設型プラットフォームも存在します。
バーチャル店舗に来店したユーザーは、実際の店舗と変わらず自由な回遊が可能です。商品を買う際は、ECサイトに遷移して購入手続きを済ませます。さらに、ECサイトとは異なり、バーチャル店舗がリアルタイムなコミュニケーションを行えます。実在の店員がアバターでバーチャル店舗に勤務することで、現実と変わらない接客を実現できるでしょう。
3.イベント開催
購入したメタバースの土地は、ゲームやファッションショーなどのイベント開催にも活用できます。ユーザーはアバターを介して会場に行き、イベントに参加します。2022年3月には、人気メタバース「Decentraland」で大型ファッションショーが開催されました。「ドルチェ&ガッバーナ」などのブランドが多数参加しており、ブランドの服を着たアバターがランウェイを歩きました。
同じくメタバースの「The Sandbox」では、購入した土地でオリジナルのゲームを公開できます。ゲームのユーザーに遊んでもらう方法は、無料・有料のどちらも選択可能です。有料化する場合は、入場料を設けるとスムーズに収益化を図れます。
メタバースの土地を買う方法
メタバースの土地を買う際は、前提として「土地を購入できるメタバース」を選ばなくてはいけません。土地を購入できるメタバースを選んだ後は、次のどちらかの方法で土地を買いましょう。
1.メタバースで直接購入
2.外部のNFTマーケットプレイスで取引
順番に解説します。
1.メタバースで直接購入
1つ目は、メタバース内で土地を直接買う方法です。メタバースの提供ベンダーは不定期に土地のセールを行っており、誰でも土地を買えます。ただし、後述のNFTマーケットプレイスより安く買えるものの、常時販売しているわけではありません。
土地を購入する際は、メタバース内で使われている独自の仮想通貨(暗号資産)が必要です。「The Sandbox」の場合、独自通貨「SAND」を仮想通貨取引所で交換し、SANDで「LAND(土地)」を購入します。取引手数料として仮想通貨「ETH(イーサリアム)」も支払います。
独自通貨の交換は、海外の仮想通貨取引所で行うケースが一般的です。例に挙げた「The Sandbox」であれば、独自通貨SANDは海外取引所、ETHは国内取引所で交換します。注意点として、海外取引所は日本向けのサービスではなく、金融庁の認可を受けていません。国内取引所よりもリスクがあるため、自分で安全性を見極めて利用する必要があります。
2.外部のNFTマーケットプレイスで取引
安全性を重視するならば、NFTマーケットプレイスの利用がおすすめです。メタバースの土地は、メタバースの提供ベンダーではなく外部のNFTマーケットプレイスでも購入できます。NFTマーケットプレイスを使う場合は、ベンダーから買う一次取引ではなく、ユーザー同士の二次取引になります。
NFTマーケットプレイスは「OpenSea」や「Coincheck NFT(β版)」などのサービスが有名です。さまざまなメタバースの土地に加え、土地以外のNFTアートなども取り扱っています。どちらのサービスも、国内取引所で交換できるETHによる取引が主流です。国内取引所は金融庁の認可を受けており、海外取引所を使うよりも安全性が高いと言えます。
ただし、NFTマーケットプレイスの土地の価格は、ほとんどの場合メタバースで直接買うよりも高額です。一次取引したユーザーが充分な売却益を狙うため、価格は高くなる傾向にあります。
OpenSeaで土地を買う手順
NFTマーケットプレイス「OpenSea」で「The Sandbox」の土地を買う手順を紹介します。
1.OpenSeaに登録
2.国内の仮想通貨取引所で「ETH」を購入
3.ETHやNFTデータを管理する「MetaMask(メタマスク)」をインストール
4.MetaMaskに購入したETHを送金
5.MetaMaskの設定画面から「OpenSea」と連携
6.OpenSeaから「The Sandbox」の「LAND(土地)」を検索し、購入
上記方法で、メタバースの土地を所有できます。土地を買いたい方は参考にしてみてください。
土地を購入できるメタバース5選
土地を購入できるメタバースは限られており、具体的には下記5つのプラットフォームが該当します。
1.The Sandbox(サンドボックス)
2.Decentraland(ディセントラランド)
3.Cryptovoxels(クリプトボクセルズ)
4.Bloktopia(ブロックトピア)
5.Axie Infinity(アクシーインフィニティ)
どのようなメタバースプラットフォームなのか、詳しい特徴を見ていきましょう。
1.The Sandbox(サンドボックス)
「The Sandbox(サンドボックス)」は、土地を購入できる代表的なメタバースです。公式サイトで「ユーザー主導のゲームプラットフォーム」と紹介している通り、ユーザーは約16万区画以上の土地で作られた仮想空間で自由に遊べます。
建物やアバターなどのアイテムを作成できるソフトウェア「VoxEdit」を用意しており、ユーザーが作成したアイテムはNFT化されます。NFT化したアイテムは、The SandboxのNFTマーケットプレイスでの販売も可能です。
他にも、無料でゲーム開発できる「Game Maker」を使えば、複雑なコーディング不要でオリジナルの3Dゲームを作れます。制作したゲームは無料または有料で公開することで、他のユーザーに遊んでもらえます。
2.Decentraland(ディセントラランド)
「Decentraland(ディセントラランド)」は、ゲーム体験やアイテム作成で遊べるメタバースプラットフォームです。ブロックチェーン技術を用いており、NFT化された土地やアイテムは仮想通貨ETHで購入します。
所有する土地をカスタマイズすることで、バーチャル店舗や公園、展示会場などの施設建設が可能です。ユーザーは仮想空間内を自由に移動できるため、さまざまな施設を探索して他のユーザーとの交流を楽しめます。遠く離れたエリアへ瞬時に移動できる「マップ機能」を使えば、現実世界のような移動時間は生じません。
音楽ライブやアートギャラリーなどのイベントが頻繁に開催されるのも、Decentralandの特徴です。公式ページにイベントの開催スケジュールが掲載されており、好きなイベントに誰でも参加できます。
3.Cryptovoxels(クリプトボクセルズ)
「Cryptovoxels(クリプトボクセルズ)」もNFTを活用しているメタバースで、土地を買えます。ユーザー同士でコミュニケーションを取ったり、散策したりして楽しめる仮想空間です。
Cryptovoxelsには多くのNFTアートギャラリーがあり、マップ上から好きな展示会場へ簡単に移動できます。展示されているNFTアートの購入や購入オファーが可能で、クリックすると直接Openseaへと繋がります。
Cryptovoxelsは購入した土地をカスタマイズできますが、土地を持っていない人向けに「Free Space」機能を提供しています。Free Spaceは、他のツールで作成した建物などのアイテムをインポートできる空間です。土地と同じく、さまざまなアイテムをカスタマイズできます。
4.Bloktopia(ブロックトピア)
Bloktopia(ブロックトピア)は、高層ビルを舞台にしたメタバースプラットフォームです。多彩なネオンカラーが特徴的な仮想空間で、ユーザーはアバターを使って21階建ての高層ビル内を散策します。
Bloktopiaの各階層の土地はユーザー向けに売り出されており、購入した土地を使った店舗運営、他ユーザーへの貸し出し・売買が可能です。Bloktopia内にはあらかじめ広告スペースが設けられており、広告出稿によって効果的に自分のコンテンツを宣伝できます。
正式リリースはまだされていないものの、開発ロードマップの発表やアルファ版のリリース決定など、着実に開発が進んでいるようです。すでに仮想通貨取引所などの企業参入が決定しており、注目度の高いメタバースと言えます。
5.Axie Infinity(アクシーインフィニティ)
「Axie Infinity(アクシーインフィニティ)」は、ベトナム発の対戦型NFTゲームです。ゲーム内のモンスター「アクシー」を使って対戦したり、育成や繁殖したりします。ここまで紹介した他のメタバースとは異なり、散策やショッピングではなくゲームがメインのメタバースです。
ゲームをプレイすると、ゲーム内通貨「SLP」を取得できます。SLPは仮想通貨と交換できるため、ゲームを楽しみながら収入を得られるメタバースとして人気が高いようです。また、繁殖により新たなアクシーを産み出すと、自分で使うだけでなくマーケットプレイスで販売もできます。
ゲームがメインですが、メタバース空間では土地の購入が可能です。土地には価値が異なる「レア度」設定があり、ユーザー同士で売買やレンタルができます。
メタバースの土地は不動産投資や店舗利用が可能なデジタル資産
メタバースの土地を買う目的は、不動産投資や店舗運営などさまざまです。購入した土地はNFTによって「同一性」や「保有者」が証明されており、購入者のデジタル資産となります。全てのメタバースで土地を買えるわけではないので、土地を買いたい方は紹介した5つのメタバースプラットフォームの中から選んでみてください。
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