新しい投資銘柄として注目を集めているのがメタバース関連銘柄です。 米フェイスブック社によるメタ社への社名変更、マイクロソフト社のメタバース戦略など、世界的企業がメタバースに参入していることから、メタバース市場が注目を集めています。 最近では、日本企業も続々とメタバースに参入しています。本記事では、メタバースの市場規模とメタバース関連の注目の日本株6銘柄のランキングを解説します。
この記事でわかること
メタバースの市場規模
▼銘柄の話題の前に、メタバースの基礎知識についておさらいしておきたいという方は、こちらの記事をぜひご覧ください。
メタバース関連の株価を見ていく前に、まずは市場規模について見ていきましょう。
メタバースが注目され始めてから、様々な企業や研究機関がメタバースの市場規模予測を出しています。しかし、各社が公開するメタバース市場規模は異なるのが現実です。2030年ころのメタバース市場規模予測を大きく分類すると、以下3つになります。
①1兆ドル未満
②1~2兆ドル
③10兆ドル以上
①1兆ドル未満と②1~2兆ドルと推測しているのは、投資機関や市場調査機関です。①1兆ドル未満という数字は、ARやVRなどの市場規模を参考に算出しているようです。②1~2兆ドルという数字は、メタバース市場を10億人規模のユーザーと仮定し、産業応用やWEB3.0要素を考慮して算出されています。
③10兆ドル以上と推測しているのは、金融系機関です。金融系機関は、メタバースがWeb3.0の中心技術になると考えています。例えば、パソコンやスマートフォンでメタバースへアクセスし、人々がコミュニケーションを取れるようになれば、グローバルで数十億人規模のユーザーが生まれるでしょう。
多くの企業や機関が推測しているのが、②1~2兆ドルです。ブルームバーグは、2024年にはメタバースの市場規模が8000億ドル(2020年は約5,000億ドル)に達すると予測(※1)しているため、2030年ころには1~2兆ドルに到達する可能性があります。
※1 出典:【ブルームバーグ】メタバース、次世代技術プラットフォームの市場規模は8000憶ドルに達する可能性
https://about.bloomberg.co.jp/blog/metaverse-may-be-800-billion-market-next-tech-platform/
メタバース市場の主な構成要素は下記のとおりです。
・メタバースゲーム
・ゲーム機やAR/VRハードウェア機器
・メタバース内におけるイベント
・メタバース内における広告
ここまでグローバル市場を見てきましたが、国内市場はどうなのでしょうか。具体的な予測結果は出されていませんが、多くの企業がメタバース参入を表明していることからも、大きく拡大すると考えられます。
ここからは、メタバース関連の注目の日本株を解説します。以下は、注目の日本株とその事業内容をまとめた早見表です。
企業名(カッコ内は銘柄の証券コード) | メタバース事業 |
ソニーグループ(6758) | 成長領域としてゲーム事業とエンターテイメント事業に参入 |
パナソニック(6752) | VRヘッドセットをはじめとしたメタバース関連機器の開発 |
グリー(3632) | バーチャルライブ配信アプリ「REALITY」での経済圏創出およびグローバル規模でのユーザーの獲得を目指す |
シャノン(3976) | 企業がメタバース上で展示会やイベントを開催できるサービスの提供 |
シーズメン(3083) | ファッションブランドのメタバース進出の支援サービス |
KDDI(9433) | 都市連動型メタバースの構築 |
注目の日本株1:メタバースへの注力を発表『ソニーグループ』
2022年5月、ソニーグループがメタバースへ注力することを経営方針説明会で発表しました。モビリティ分野とともに、メタバースを成長領域として位置づけていることからも、その注目度の高さがうかがえます。
ソニーグループは創業当時より、「感動を作り、届ける」ことに取り組んでいます。感動の作り方と届け方は、テクノロジーの進化により変化し続け、今回ソニーグループはメタバースに注目したわけです。
まずはゲーム事業でメタバースに参入する予定です。ソニーが強みを持つゲーム開発ノウハウをもとに、リアルタイムCGとAIテクノロジーを活用し、メタバースゲームへと参入します。最終的には、ライブエンターテイメントでのメタバースの活用を目指しているようです。
例えば、メタバースゲーム「フォートナイト」はメタバース上で人気アーティストのコンサートを開催しており、大きな成功をおさめています。「フォートナイト」のようなゲームを足がかりに、アーティストにライブプラットフォーム空間を提供するのが目的だと考えられます。
ソニーグループの資産である映像/音響や物理的シミュレーション技術などをメタバースと組み合わせれば、限りなく現実世界に近いメタバースの実現が可能となるでしょう。
すでにソニーグループは、2021年11月より英マンチェスター・シティ・フットボール・クラブとの協業で、仮想空間上で選手の動きをリアルタイムで再現する技術の開発に取り組んでいます。この技術が完成すれば、どこに住んでいようとも、メタバース上で選手のプレイを観戦できるようになるでしょう。
ソニーグループのメタバース参入は大きな期待にあふれていますが、同社の社長は「どのように事業モデルを構築するのかが課題」とも述べます。ただ、ソニーグループには一般消費者向けのサービス提供ではなく、クリエイター向けの製品や技術開発を進めてきた歴史があり、その点においてもメタバースとの相性は良いと考えられます。
注目の日本株2:メタバース向けハードウェアに取り組む『パナソニック』
2022年1月、国内外のメディアがパナソニックがメタバース事業に参入するニュースを報じました。これはパナソニックが世界最大のテクノロジー見本市CESで、メタバース関連製品を3つ発表したことを受けてです。
正確にお伝えするのなら、メタバース関連の製品を発表したのは、パナソニックの100%子会社シフトールになります。もともと2020年よりパナソニックはVRグラスの開発を進めてきましたが、フェイスブック社がメタ社に社名を変更したことやメタバースへの注目度が高まったことをきっかけに、早期の製品化を決めたようです。
発表された製品の中で注目を集めているのが、眼鏡型のVRヘッドセット「メガーヌエックス」です。マイクロ有機ELの採用により、高精細の映像の提供を実現しています。また、パナソニックが強みを持つ音響やカメラ技術を活用した精度の高いスピーカーやレンズを搭載しています。
300グラムを超えるVRヘッドセットが多い中、本製品の重量は約250グラムと軽量です。軽量化実現の背景には、薄型レンズの使用やバッテリーの未搭載などが挙げられます。軽さと装着感を追及しているため、長時間の使用に最適です。
2つめの製品は、小型の冷熱装置「ペブルフィール」です。本装置を搭載した専用シャツを着用すると、メタバース内で火に近づくと熱さを感じ、雪の世界に入ると冷たさを感じるなどの、メタバース上の温度を再現できます。メタバースへの没入感を高める装置となるでしょう。
3つめの製品は、口に装着するマイク「ミュートーク」です。本製品を使用すれば、音漏れを少なくでき、クリアな音声でメタバース上の会話を楽しめるようになります。
これら3製品を見てもわかる通り、パナソニックが注力するのはメタバース関連機器の開発と販売です。前述のブルームバーグ発表(※1)によると、メタバース市場の約70%を占めるのがソフトウエア/サービスからの収益とゲーム内広告の収益であり、残りはゲーム機やハードウェア、半導体です。
パナソニックは自慢の技術力を武器に、比較的大きな市場に参入しており、今後も注目の日本株です。
注目の日本株3:100億円の事業投資をする『グリー』
2021年、グリー株式会社は2~3年かけて100億円規模の投資をメタバース事業に行うと発表しました。もともとグリーは、個人ユーザーへ向けたバーチャルライブ配信アプリ「REALITY」の運営をしています。「REALITY」は全世界63の国と地域に展開しており、ユーザー数は数百万人にもなるほど大きなプラットフォームです。
グリーは「REALITY」のライブエンターテイメント事業をメタバース事業と再定義したうえで、グローバルで数多くユーザーの獲得を目指します。
グリーのメタバース事業の軸となる「REALITY」では、ユーザーはアバターを通して、メタバース上でゲーム配信やコミュニケーションなどができます。アバターを活用する性質上、顔出し不要かつなりたい自分になれるという特徴があります。
グリーは今後、「REALITY」上での経済圏創出を狙っています。経済圏が誕生すれば、個人がアバターを通してアート作品の販売や英会話サービスの提供などの自由な営利活動が行えるようになるのです。また、REALITY上での雇用の機会も生まれるでしょう。
すでにメタバース事業への第一歩として、ユーザーが自由に交流できる「ワールド」の提供を開始しています。トライアルで行われた「桜ワールド」では、来場者数が400万人を超えるほどの成功をおさめています。
また、2022年6月15日より法人向け「REALITYワールド」の提供を開始しました。法人はワールド上で、プロモーションや展示会の開催、バーチャル支店の開設、仮想空間都市の構築などが可能です。
メタ社をはじめ仮想空間構築に取り組む企業は多いですが、国内だけ見ると、その数はまだまだ少ないです。グリーが国内におけるメタバースプラットフォームのリーディングカンパニーとなれるかどうかに注目しましょう。
注目の日本株4:メタバースプラットフォームを提供する『シャノン』
シャノンの子会社ジクウは、3D空間のメタバースイベントプラットフォーム「ZIKU」を提供しています。ユーザーは、アバターでメタバース上を自由に歩き回り、様々なブースで出展企業の担当者とコミュニケーションをとることが可能です。
企業は、複数パターンのデザインテンプレートから外観や内観などのデザインを選択し、ロゴや資料コンテンツ、説明員の配置などを設定するだけで、簡単に3Dブースを構築できます。
メタバース上で展示会を開催することで、場所の制約を取り除き、多くの潜在顧客と接点を作れます。注目点は、出展社から音声で話しかけられることです。
多くのオンライン展示会では、出展社から来場者に話しかけることはできません。しかし、「ZIKU」ならリアルイベントのような双方向のコミュニケーションが可能であり、効率よく自社ブースにユーザーを呼び集められます。
また、出展企業はリアルタイムに来訪者の行動データを取得できます。行動データを分析すれば、効果的なフォローアップや他の施策の改善などにつなげられるでしょう。
親会社のシャノンが強みを持つイベント開催のノウハウも活用することで、展示会の開催準備から終了までをワンストップサポートします。ウェビナーの次は、メタバースでの臨場感あるイベントが普及するかもしれません。
注目の日本株5:ファッションブランドのメタバース参入を支援『シーズメン』
カジュアルウェアを主に取り扱うシーズメンは、ファッションブランドのメタバース参入支援サービスを提供しています。その第1弾として、世界的ブランド「ファセッタズム」のバーチャル店舗開設や商品展開に取り組んでいます。
すでに世界のファッションブランドの多くが、メタバース専用のウェアやアクセサリー、スキンなどの提供をしているのです。アメリカの調査会社は、デジタルファッショアイテムの市場は年間400億ドル(約4兆円)になると推測しています。
実際に、無料のメタバースゲームにおいてデジタルファッションは重要なマネタイズ要素です。無料でプレイできるフォートナイトが年間10億ドル以上の収益を上げられている理由は、デジタルファッションにあると言われているほどです。
メタバースが普及すれば、ファッションを通して、自身のアバターに個性を与えたいと考えるユーザーが増えるでしょう。そうなったとき、多くのファッションブランドがメタバースでマネタイズすることになるはずです。
メタバースへの参入を考えていながらも、ノウハウやテクノロジーがないため、断念するブランドは少なくありません。そういったファッションブランドを支援するシーズメンには、大きな需要があり、今後の成長にも期待できます。
注目の日本株6:メタバース空間を構築した『KDDI』
KDDIは、渋谷区観光協会や渋谷未来デザインなどと共同して「渋谷5Gエンターテイメントプロジェクト」を発足しました。プロジェクトの一環として、渋谷区公認の都市連動型メタバース「バーチャル渋谷」を構築したのです。
都市連動型メタバースとは、実際の都市の景観や文化などからモチーフを得ているメタバース空間であり、都市経済圏とメタバース経済圏などが連動する特徴があります。バーチャルイベントプラットフォーム「cluster」でバーチャル渋谷を配信し、累計100万人が利用するほどの注目を集めました。
これまでバーチャルハロウィーンやバーチャル空間内での野球観戦などのイベントを提供し、今後は個人ユーザーが自由に出展やイベント開催などができる自由な場にする計画があります。
また、KDDIはメタバース上で購入した商品が現実世界の家に届くような、メタバースと現実世界の連動性を重視しているようです。KDDIは、2016年ごろからARとVRを含めたXR領域に投資しています。XRやメタバースの取り組みでは先行しており、今後どのようなサービス展開をするのかに注目です。
メタバースの日本株に注目
メタバースの注目が高まるにつれて、多くの企業が続々と参入しています。海外の大手企業の動きが話題になることが多いですが、国内企業の動向にも注目しましょう。
メタバースの日本株に注目することで、メタバースのトレンドや情報、どのようなサービスが開発されているのか理解できます。今回紹介した日本株はほんの一部ですので、興味のある方はぜひ他の日本企業にも注目してみてください。
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