「メタバースの年」と言われる2021年から2022年現在も、メタバースが非常に大きな注目を集めています。NFTの技術に投資家の資産が集まっていることもふまえ、メタバースの市場は今後も拡大していくことが予想されます。メタバースの市場の拡大にあわせ、メタバース開発に携わるエンジニアの需要も増加していくでしょう。 今回は、メタバースの作り方やメタバースの構成要素、制作に利用されるツール・言語やメタバースエンジニアになるための環境やスキルを解説します。メタバースエンジニアに興味のある方は、ぜひ本記事を参考にしてください。
この記事でわかること
メタバースの概要や将来性
▼作り方の前段階である、メタバースのそもそもの基礎知識については、こちらの記事で解説しています。あわせてご覧ください。
メタバースとは、3DCG技術を活用して構築されたバーチャルな空間(仮想空間)をさします。メタバース上では、複数のユーザーが同時にアクセスし、様々な活動を行えます。メタバースは主にオンラインゲームやコミュニケーションの場として利用されていましたが、近年では企業の技術公開をメタバース上で行うなど、企業活動にも活用されるようになっています。
よくメタバースと混同されやすい言葉にVR(Virtual Reality)がありますが、両者は異なるものです。メタバースは仮想空間をさしますが、VRは仮想的な体験を行うためのツールです。メタバースとVRを同時に利用する場合もありますが、メタバースにVRの要素は必須ではありません。メタバースは仮想空間を構築する技術、VRは仮想現実を体験するための技術ととらえるとよいでしょう。
メタバースは、働き方改革や新型コロナウイルスなどの影響により、リモートでのコミュニケーション需要が高まったため、前述した広報活動や教育・研修、バーチャルマーケットによる経済活動など様々な用途で利用されるようになっています。また、NFTの技術に注目が集まっていることで、巨額の投資が集まり市場規模が急速に拡大しています。
メタバース市場の拡大に伴い、今後もメタバースに関するエンジニアの需要は高まっていくものと思われます。メタバースに強いエンジニアとなれば、多くの企業から必要とされる市場価値の高いエンジニアになることができるでしょう。
▼メタバースの今後の展望については、こちらの記事でも詳しく解説しています。
メタバースを構成する要素と作り方
メタバースを構成する要素には、主にアバター、オブジェクト(プロップ)、バーチャル空間の3つがあります。それぞれの特徴や作り方を解説します。
アバター
アバターはメタバース上でユーザーの分身となるキャラクターです。ユーザーはアバターを操作することで、メタバース上で様々なインタラクションを行えます。アバターは人型に限らず、動物やロボットなど様々な種類があり、ユーザーの好みにあわせてカスタマイズを提供しているサービスも多いです。
アバターは3DCG技術を利用したツールで作成できます。近年ではReady Player MeやAvatar Maker、VRoid Studioなど様々なツールが提供されています。無料で利用できるものもあるため、まずはどのようにアバターが作成できるのかを自分で試してみるとよいでしょう。
オブジェクト(プロップ)
オブジェクトはメタバース上に存在する建造物や小道具類です。小道具類についてはプロップと呼ばれることもあります。ユーザーはアバターを通してオブジェクトにインタラクションし、様々な体験をすることができます。
オブジェクトはプログラミング言語を使用して一から作成することもできますが、アバターと同様に3DCGソフトを利用しての作成が便利です。Blenderのような3DCGツールを使って、オブジェクトの作成を試してみるとよいでしょう。
バーチャル空間
バーチャル空間はメタバースの仮想空間そのものです。バーチャル空間はメタバースの土台となるもので、バーチャル空間上にオブジェクトを配置し、アバターが動ける環境を構築します。バーチャル空間はマインクラフトの世界を想像するとイメージがしやすいでしょう。
バーチャル空間はプログラミング言語を使用して構築できますが、現在ではバーチャル空間を作成できるプラットフォームが複数提供されています。プラットフォームとしてはclusterやXR CLOUDなどが有名です。clusterはスマホからでもバーチャル空間を作成でき、メタバース構築の体験用として非常に利用しやすいでしょう。
メタバース制作に利用されるツール
「メタバースを構成する要素と作り方」でも簡単に触れていますが、メタバース制作に利用される主なツールを紹介します。
DCCツール(Digital Content Creation Tools)
DCCツール(Digital Content Creation Tools)は、3DCGの制作に必要な素材データ(アニメーション、モデル、音声データなど)をまとめたものであるアセットを作成するために利用されます。DCCツールは3DCGに必要な素材データを作成するためのツールであり、3DCGモデリングを行うものだけをさすわけではありません。
3DCGモデリング用のBlenderのようなツールだけでなく、2Dの素材データを作成するためのPhotoshopやGIMPなどの画像編集ツールもDCCツールに含まれます。
ゲームエンジン
ゲームエンジンは、ゲーム作成に必要な開発環境です。メタバースの構築において、ゲーム以外の開発用途にもゲームエンジンは活用されています。ゲームエンジンを活用して、DCCツールを利用して作成したアセットを配置すれば、よりメタバースの構築がしやすくなるでしょう。
主なゲームエンジンにはUnityやUnreal Engineなどがあります。UnityやUnreal Engineは個人利用であれば無料からでも利用ができます。メタバース構築に興味のある方は、どのようにメタバースが構築できるのかを無料で試してみるとよいでしょう。
メタバース制作に利用されるプログラミング言語
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メタバース制作は、ゲームエンジンなどのツールを活用すれば大枠の作成は簡単に行なえますが、細部の調整や他のサービスなどとの連携にはプログラミング言語を使ったカスタマイズが必要になります。現在メタバース制作に利用されている主なプログラミング言語を紹介します。
C#
C#はMicrosoft社が開発したプログラミング言語です。C#はもともとはWindows OSのプラットフォーム上でしか利用ができませんでしたが、現在ではMac OSやiOS、Androidなどの主要なOS上でも利用ができるようになっています。
メタバース制作をする上でC#がよく利用される理由としては、Unityの制御は基本的にC#が利用されているためです。C#のみでもメタバース制作は行なえますが、やはりUnityなどのゲームエンジンを活用したほうが制作効率は良くなります。UnityとC#の組み合わせは、現在のメタバース制作における主流となっています。
C++
C++は、古くから利用されてきた汎用的なプログラミング言語であるC言語の機能や特徴を継承し、オブジェクト指向などの改良が加えられたプログラミング言語です。C++はC言語と同様に汎用性の高いプログラミング言語であるため、メタバースに限らず様々な開発用途に利用されています。
C#がUnityでの制御に利用されているように、C++はUnreal Engineの制御に利用されます。Unreal Engineはゲーム開発で人気のプラットフォームのため、ゲームに利用されるメタバース開発に携わる際にはC++を学習しておくとよいでしょう。
JavaScript
JavaScriptは主にWebサービスの開発に利用されるプログラミング言語です。ブラウザ上で処理を行うプログラムにはJavaScriptが利用されます。メタバース制作においても、メタバースに必要なアプリケーションをブラウザ上で管理すること、メタバースとブラウザ上の他サービスを連携させることが多々あります。メタバース制作に携わる場合には、JavaScriptの知識も有利に働くでしょう。
▼メタバース開発で使用するプログラミング言語については、こちらの記事でも詳しく解説しています。
メタバースに携わる職種
メタバースの制作には様々な職種の人材が携わっています。主にあげられる職種としては以下のようなものがあります。
・クリエイター
・開発エンジニア(プログラマー)
・インフラエンジニア
・セキュリティエンジニア
クリエイターはDCCツールを活用し、メタバースに必要な素材データを作成します。素材データをもとに、ゲームエンジンとプラグラミング言語を利用してメタバースのバーチャル空間構築やオブジェクト配置、アバター動作などを行うのが開発エンジニアです。
クリエイターと開発エンジニアによってメタバース自体の制作はできますが、実際にメタバースが動作し、インターネット上からアクセスできるようにするためには、サーバーやネットワークなどのインフラ環境が必要になります。また、不正アクセスやインジェクション攻撃などを受けないようにするためには、適切なセキュリティ対策も必要になるため、インフラ環境構築とセキュリティ対策を行うインフラエンジニア、セキュリティエンジニアも重要な存在です。
メタバースエンジニアに必要なスキル
メタバースに携わるエンジニアになるためには、「メタバースに携わる職種」で紹介した職種に必要なスキルが求められます。クリエイターであれば3DCG・デザインにおける知識を持ちDCCツールを使いこなすスキル、開発エンジニアであればプログラミングスキル、インフラエンジニアであればサーバーやネットワークなどの構築・運用スキル、セキュリティエンジニアであればセキュリティにおける知識とアプライアンスの構築・運用スキルなどです。
ただし、いずれの職種においても、IT全般の基礎的な知識・スキルは必要になります。また、メタバースの制作には多数の職種や人員が携わることになるため、業務を円滑に進めるためのコミュニケーションスキルも重要です。現場によっては英語やプロジェクトマネジメント、マーケティングなどのスキルが重要になる場合もありますので、メタバースエンジニアになる際には、事前にスキルの棚卸しを行っておくとよいでしょう。
メタバースの開発業務に携わる方法
メタバースの開発業務に携わる方法としては、主に以下の3つがあげられます。
・メタバースの開発業務を行っている企業に転職する
・派遣会社に登録し、メタバース関連企業で派遣業務を行う
・フリーランスとしてメタバースの開発案件を受注する
既に3DCGを扱うクリエイターやプログラマー、インフラエンジニア、セキュリティエンジニアなどの実務経験があれば、メタバースの開発業務を行っている企業に転職することでメタバースの開発業務に携われるでしょう。しかし、企業が中途採用を行う場合、基本的には即戦力となる人材を求めています。クリエイターやエンジニアにおける何かしらの経験があっても、メタバースの業務からかけ離れている実務経験では転職が難しい可能性があります。
その場合は、派遣会社に登録し、メタバース関連企業での業務を希望するのも手です。派遣会社であれば、未経験からでも登録を受け付けている企業もあります。最初からメタバース開発業務に携わることは難しいかもしれませんが、まずは現場で他の業務を行いつつメタバースの知識をつけ、ステップアップするという方法もあります。
逆にメタバース開発業務の実務経験がある場合には、フリーランスとして案件を受注する方法もあるでしょう。メタバース開発業務の案件自体はまだ多くはありませんが、今後案件が増えてくることに期待ができます。企業に転職するよりも報酬は高くなりやすいため、技術や顧客折衝に自信がある方はフリーランスを目指してみるのもよいでしょう。
メタバースエンジニアの年収や案件相場
メタバースエンジニアの年収としては、求人情報サイトを参照すると、正社員の場合は年収300万円台から1000万円超えまで幅広く存在しています。30代の中堅層のボリュームゾーンは500万円~700万円程度であり、現状は他のエンジニアと大きな年収の差はないと言えるでしょう。ただし、今後の需要増によって、年収がより高い水準になる可能性はあります。
一方、フリーランスとして案件を受注する場合、単価は月60万円~100万円程度です。まだ案件自体が少ない状況ですが、今後案件数が増加してくると、より高単価での受注もしやすくなるでしょう。また、プログラマーとしての経験だけでなくプログラマー+インフラエンジニアといったように複数の実務経験をもっている場合は、より高単価での受注にも期待できます。
メタバースエンジニアは、現時点では他のエンジニアと比べて大きく高年収・高単価とは言えませんが、一般的な給与水準で言えば年収・単価は高めです。今後の需要増を見込めば、より高年収・高単価を目指すこともできるでしょう。メタバースの技術に興味のある方は、今後より利用が広まっていくメタバース業務に携わるエンジニアを目指してみるとよいでしょう。
メタバースの作り方をおさえてメタバースエンジニアを目指そう
メタバースは、現実空間と仮想空間を高度に融合させた社会(Society5.0)の実現に向けて、大きな注目が集まっている技術です。NFT技術などで投資家の資産が集まっている点もふまえ、今後もメタバース市場は大きくなっていくことが見込まれています。一方で、メタバースの業務に携わるためには、3DCGやプログラミング、インフラ、セキュリティなどの専門的な知識・技術が必要になり、今後メタバースエンジニアが不足する状況になることも十分考えられます。
今からメタバースエンジニアに必要な知識・技術を理解しておけば、メタバースエンジニアの需要増にあわせて活躍できる人材になりやすいでしょう。報酬面においても、現在は他のエンジニアと比べて特段高年収というわけではありませんが、今後より高年収・高単価を獲得できる可能性があります。メタバースの分野に興味を持たれている方は、ぜひメタバースエンジニアを目指してみてください。
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