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メタバースやVRの開発に必要なプログラミング言語とは? スキルや仕事についても解説

終了目安時間:10分

2022.11.05

インターネット仮想空間「メタバース」は、3DCGやVR、ブロックチェーンといった情報技術によって構成されています。そのため、プログラミングができれば、メタバースの世界における建物やアイテム、自然などさまざまなものを開発できるのです。 今回はメタバース開発者「メタバースエンジニア」になるために必要なプログラミング言語や、スキルについて解説します。

メタバースの普及

メタバース

メタバースは、インターネット上の仮想空間

メタバースの例としては、2003年に発表された「Second Life」があげられます。多くの企業がメタバースに投資し、2007年には一大ブームとなりました。しかし当時は現在よりも通信速度が遅かったことや、利用には高性能なPCが求められたため、利用者がなかなか増えませんでした。

しかし現在では、通信速度も改善され、スマートフォンやタブレットも普及し、数多くのオンラインコンテンツも展開されています。その流れを受けて、メタバースも再び脚光を浴びるようになりました。

米Bloombergの推計(※1)によると、ソーシャルメディアやライブなどの周辺業界も含めた市場規模は4787億ドル(日本円で約60兆円)、2024年には7833億ドル(日本円で約98兆円)を突破すると言われています。

※1 出典:【Bloomberg】メタバース、次世代技術プラットフォームの市場規模は8000憶ドルに達する可能性

https://about.bloomberg.co.jp/blog/metaverse-may-be-800-billion-market-next-tech-platform/

メタバースのサービスは何があるか

・コミュニケーション

アバターを利用し、あたかも目の前にいる人と会話できるコミュニケーションツールがあります。

Facebook(現:meta)が開発したビジネス会議用VRシステム「Horizon Workrooms」は、同じ仮想空間に集まり、アバターを通じてビデオ通話ができます。会議室の大きさやレイアウトを自由に変えられるほか、ホワイトボードの内容も共有できます。

VRChat.Incが運営する「VRChat」も、多人数でコミュニケーションがとれるソーシャルVRプラットフォームです。無料で利用でき、世界中の人とコミュニケーションがとれます。また、自分専用の空間「ワールド」を作成して空間を自分好みに装飾したり、素材をアップロードしたりして楽しむことができます。

日本国内の企業が運営しているプラットフォームも存在します。クラスター株式会社が運営するバーチャルSNS「cluster」は、バーチャルイベントの開催やユーザー同士の交流ができます。パソコンだけでなくスマホでも楽しめます。

・オンラインゲーム

人気ゲーム「Minecraft(マインクラフト)」や、「あつまれ どうぶつの森」は、代表的な広義のメタバースです。アバターを使って野菜を育てたり建物を建築したりできるほか、他のユーザーとも交流することも可能です。ゲーム内の世界を自由に楽しむことができます。

「フォートナイト」も、同じくメタバースです。ユーザー同士で戦いあい生き残るというモードがある一方で、「パーティーロイヤル」という戦闘行為を目的とせず自由に自己表現できるモードも存在します。このモードを利用して、実際にアーティストのライブなどのイベントも行われました。

他にも、オリジナルの空間を制作できる「クリエイティブモード」では、フォートナイトの世界に建物を作ったり、ミニゲームを作って楽しんだりすることもできます。

・ブロックチェーン、NFTを利用した商取引

メタバースでは、ブロックチェーンやNFT(非代替トークン)などの技術を用いて、現実と同様の商取引を可能にしています。ブロックチェーンはデータを鎖のように連結して保管する技術で、データの改ざんを困難にします。この技術はビットコインなど仮想通貨に利用されています。

また、NFTはブロックチェーンの技術を用いて、デジタル資産の改ざんを防止します。これらの技術により、メタバース上でデジタル資産の取引を実現しています。

メタバースの特長

・国や土地柄にとらわれず、グローバルな交流が可能

現実世界では、国境やその国の文化、情勢などを考慮する必要がありますが、メタバースではオンライン上の仮想空間であるため、接続すれば世界中のどのユーザーとも交流できます。

・非日常的な体験ができる

メタバースは仮想空間であるため、非日常的な体験が可能です。空を自由に飛び回ることもでき、高いところから落ちても怪我をすることがありません。現実世界では体験できないことも実現できます。

・NFTの土地やアイテムなどの売買によりマネタイズが可能

メタバースでは、アバターが利用できるアイテムや仮想通貨取引、NFT化した商品の販売ができます。ビジネスを拡大させるため、メタバースに参入する企業も増えています。

メタバースの開発に携わる職種

成功してガッツポーズをする男性プログラマー

3DCGクリエイター、デザイナー

メタバースの様々な環境をデザイン、開発する職種です。ユーザーがアバターとして扱う3Dキャラクターのデザイン、建物や背景、デジタルアイテムなどのモデリングを行うのが主な仕事です。

メタバースで使用できる衣装やアイテムを制作し、それらを販売する企業も存在します。そのため、メタバースのプラットフォームを運営する企業以外にも、スポーツブランドなどメタバースに商品を販売している企業に就職し、メタバースの開発に携わるという方法もあります。

プログラマー

3DCGクリエイター、デザイナーが作成したキャラクターやアイテムを実際にメタバースの世界で使えるようにするのがプログラマーの仕事です。例えば、3DCGでボールをデザインしたとします。このボールがメタバースの世界で登場し、ボールが投げられて放物線を描く動きや転がる動きなどは、プログラミングによって動作します。

メタバースであたかも現実世界のようにオブジェクトが動いたり売買できたりする仕組みを作るのはプログラマーであるため、メタバースの世界をつくる重要な職種です。

インフラエンジニア

メタバースはプログラミングによって動きますが、そのプログラムが動くために必要なサーバーやネットワークなどのITインフラは、インフラエンジニアによって構築・運用されます。そのため、インフラエンジニアもメタバースには欠かせない職種です。

サービス利用者が多くなり同時接続数が増えれば、その負荷に耐えられるITインフラを整えなければなりません。またサーバーの機器故障や外部からの攻撃に対するセキュリティ対策に対応するのも、インフラエンジニアの重要な仕事です。

ITインフラはメタバース利用者からは直接目の触れる部分ではないため、縁の下の力持ちといえる職種です。

メタバースの開発で使う主なプログラミング言語

プログラミングのイメージ

Unity/UnrealEngine

Unityは、Unity Technologiesが提供するゲームエンジン、およびゲーム開発プラットフォームのことです。3Dや2Dのゲームを作るために必要な機能がまとめられており、クオリティの高いゲームを手軽に開発できます。

Unityで開発したゲームはマルチプラットフォームに対応しており、Windows、Macなどのパソコン、iOSやAndroidなどのスマートフォン、タブレットだけでなく、PlayStationやXboxなどのコンソールゲームでも利用できます。

また、ユーザーが開発したプログラムや部品、素材などを公開・販売できるアセットストアが充実しており、必要なアセットを検索して機能拡張や効率的な開発が行える点も特長です。

C#

C#はMicrosoftが開発し、同社が提供する「.NET Framework」上で実行するプログラミング言語です。当初はWindows専用のプログラミング言語でしたが、Microsoftがマルチプラットフォーム化を行ったため、スマートフォンアプリなどWindows以外でも利用できるようになりました。

メタバースの開発においては、C#を学ぶのがおすすめです。その理由は、UnityでC#が利用できるためです。Unityは簡単に3D開発が可能ですが、細部まで調整を行うにはプログラミングをしなければなりません。そのプログラミングに利用できる言語として、C#が対応しています。

UnityとC#をつかってゲームを開発する書籍やサイトも数多くあるため、Unityと一緒に習得しやすいというメリットもあります。

JavaScript

JavaScript(JS)は軽量プログラミング言語で、「ブラウザで処理を行うことができる」という特長を持ちます。ショッピングサイトをはじめとしたWebサービスでは欠かせないプログラミング言語です。

例えばブラウザだけで利用できるチャットツールやゲームを開発したい場合は、JavaScriptを学んでおくと便利です。

以前ではUnityでもJavaScriptをサポートしていましたが、新しいバージョンではC#のみ対応しています。以前のバージョンで対応していたJavaScriptは、新しいバージョンでは廃止されているため、注意しましょう。

Python

Python(パイソン)は1991年に公開されたオープンソースのプログラミング言語です。簡潔でわかりやすいプログラミングが記述でき、また豊富なライブラリが用意されている点が特長です。

特に、PythonはAI(人工知能)や機械学習に関連するライブラリが豊富に用意されており、AIを学習するにはおすすめのプログラミング言語です。またゲームやアプリケーションの開発も可能であり、メタバースでもPythonで開発したゲームを組み込んだり、AIをメタバース上で動かしたりすることもできます。

C++

C++は、C言語にオブジェクト指向など多くの改良が加えられたプログラミング言語です。オブジェクト指向型言語ですが、C言語と同じく手続き型プログラミング言語としても利用可能です。

C++は他のプログラミングに比べ、実行時間が速いのが特長です。また汎用的に利用できるため、大規模システムやロボット制御などの組み込み開発、ゲーム開発など様々な用途に利用できます。複雑な処理をなるべく早く処理したい場合は、C++で開発するのが選択肢としてあげられるでしょう。

ただし言語仕様がやや複雑であり、習得難易度が高いという点もあげられます。

Java

Javaは非常に汎用性の高いプログラミング言語で、Webサービスやスマホアプリの他、大規模システム開発、マイコンなどにも利用されます。特長はプログラムがJVM(Java仮想マシン)上で動くことで、JVMが動く端末であれば、どの端末でも動作します。

メタバースでは、主にサーバー側の処理をJavaで開発するケースもあり、求人でJavaエンジニアが求められています。

メタバースの開発者になるために必要なスキル・経験

打ち合わせしてガッツポーズする男女

3DCGに関するスキル

仮想空間内のキャラクターや建物などを設計・デザインするためには、3DCGに関するスキルが求められます。具体的には、デッサンやイメージ画から3Dモデルを作るモデリング、3Dモデルに立体感を加えるテクスチャー、キャラクターに動きを加えるアニメーションなどを実施できるスキルが挙げられます。

また、少なくとも3DCG制作ソフトを使いこなせるスキルも必要です。BlenderやMeshmixerなど無料で利用できる3DCG作成ソフトもあるため、3Dモデルの作成スキルを身につけたい方はこれらを利用するというのも方法の1つです。

デザインスキル

デザインスキルはキャラクターや背景などの仮想空間をデザインするためのものと、UXやUIなどユーザー体験をデザインするものがあります。

UXとは「ユーザー体験」を意味し、メタバースで体験する内容を創造しながら空間をデザインします。

UIは「ユーザーインタフェース」を意味し、ユーザーとシステムの接点です。ユーザーはUIを通してメタバースを利用するため、ユーザーにとって使いやすいUIをデザインするのがUIデザインです。

仮想空間のモノ(オブジェクト)のデザインと、ユーザーが仮想空間内で体験したり利用したりするためのデザインの両方を創造するスキルが求められます。

Unity開発経験

メタバースの開発者として即戦力となるには、Unity開発経験があると有利です。Unityを使えば3Dゲームのプログラミングが効率よく行えるほか、VRの開発もできます。加えて、細かい調整を行うためにC#のスキルもあるとなおよいです。

メタバースのプログラマーになりたいのであれば、Unityを学んで開発経験を得るのがおすすめです。

スマホアプリ開発経験

メタバースはスマホに対応しているものもあるため、iOSまたはAndroidアプリ開発経験があると有利です。例えば、3Dを利用したゲームや、SNSなどのコミュニケーションツールを開発した経験があるとよいでしょう。

ビジネススキル

メタバースに限らず、プログラムを開発する現場では、コミュニケーションが重要です。メタバースを開発するのも、多くの人と連携しながら構築していきます。デザイナーやプログラマー、インフラエンジニアの他、顧客を含めた関係各所と調整しながら開発を進めていきます。

そのため、コミュニケーション能力やマネジメント能力が求められます。また、メタバースは国や土地柄などに囚われない特長から世界中の人と一緒に開発することもあり、英語をはじめとした語学力も必要です。

プログラミング言語の勉強方法

「METHOD」と書かれたスタンプとノート、ペン

サービスや書籍を用いて独学する

プログラミングの基礎を学ぶなら、Progateやドットインストールといったサービスを活用する方法もあります。また、プログラミング言語の公式サイトも存在し、各種ドキュメントやリファレンスを見て学ぶことも可能です。

独学で学ぶ場合は、まず目的を明確に決めましょう。目的も計画もなく学習を始めるとだらだらと時間だけが過ぎてしまったり、目標を見失い挫折したりしがちです。「オリジナルのゲームをつくる」「2か月でカリキュラムを全部終える」でもよいので、モチベーションを維持しながら楽しく学ぶことが大切です。

また、学習の途中で行き詰ったときに相談相手がいるとよいでしょう。有識者に質問したり、コミュニティを活用したりして情報を得ることで、よりスキルアップにつながります。

プログラミングスクールで学ぶ

独学が難しいのであれば、プログラミングスクールで学ぶというのも1つの方法です。まとまった期間やお金が必要ですが、経験者から直接学べる上、困ったときも質問や相談を行えます。

ここでは、メタバースの開発に必要なスキルを学べるプログラミングスクールを2つご紹介します。

・TechAcademy Unityコース

「TechAcademy Unityコース」では、Unityを使ってオリジナルゲームアプリを作成することを通して、スキルを身につけられます。Unity、C#、スマホ向けゲームアプリの開発などを体系的に学べます。

・SAMURAI ENGINEER エキスパートコース

「SAMURAI ENGINEER エキスパートコース」では、完全オーダーメイドで自分の目的に合わせたカリキュラムを選択できます。ここでUnityやC#、ゲーム開発、スマホアプリ開発を学んでメタバース開発の即戦力となるスキルを身につけられます。

プログラミングを学んでメタバースエンジニアを目指そう

本記事では、メタバースの開発に必要なプログラミング言語と、その学習方法について解説しました。メタバースはこれから大きく発展が見込まれており、需要が高まる可能性があります。

おすすめのプログラミング言語としてはUnityおよびC#です。その他の言語も必要とする求人はあるので、学んでおくとよいでしょう。

独学でも学習できますが、詰まったときに相談相手がいる方が挫折を避けられます。友人や同僚に質問したり、コミュニティを活用したり、プログラミングスクールを利用する、といった方法を検討してみてください。

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